「日出町墓地等の経営に関する条例」
の改正を求める陳情書
令和7年6月定例会に「日出町墓地、納骨堂、火葬場の経営に関する条例の改正」を求める陳情が提出されました。
【陳情原文】
1.陳情の趣旨
日出町墓地、納骨堂、火葬場の経営に関する条例」には、埋葬方法について明確な規定がないので公衆衛生、公共の福祉、環境保護の観点から、埋葬は焼骨とするようは条例を改正していただきたく存じます。
2.陳情の理由
(1)公衆衛生の向上
焼骨による埋葬は感染症のリスクを低減し、衛生的な環境を維持することができます。
(2)環境への配慮
土葬に比べ、焼骨は土地の有効活用が可能であり、環境負荷を軽減できます。
(3)社会的な受容性
日本国内では火葬が一般的であり、焼骨による埋葬は社会的にも受け入れられやすい方法です。
3.要望事項
日出町墓地、納骨堂、火葬場の経営に関する条例を改正し、「埋葬は焼骨とする」旨を明記していただきたく、議会においてご検討いただきますようお願い申し上げます。
埋葬を焼骨とする陳情 採決の結果
「趣旨採択1・採択2・不採択11」
陳情は、まず、私の所属する福祉文教委員会(委員長を除く7名)で審査され、その後、全議員による本会議(議長を除く13名)にて多数決により採決されます。
委員会審査の結果、「趣旨採択」を主張する議員は私一人であり、他6名の委員が不採択。本会議においては、「趣旨採択」は同じく私1人、そして、「採択」の議員が2人、「不採択」の議員が11人となり、埋葬を焼骨とする陳情は「不採択」となりました。
本会議で「趣旨採択」とする理由を討論
執行部との慎重な調整が不可欠
提出されたこの陳情「埋葬は焼骨とする」すなわち、日出町全域を「土葬禁止区域とする」旨を明記する条例改正を議会に求めるものです。すなわち、付託される(私の所属する)福祉文教委員会が審査のうえ採択し、条例改正案を発議(提案)。本会議で議会が可決し、改正条例を施行すること。または、町長および執行部に対してその実現に向けた働きかけを行うよう求めるものです。
確かに、地方自治法の規定により、議員個人または委員会が、政策条例に限らず幅広い分野において条例案を提出できる制度的な根拠は整っております。しかしながら、本件のように、住民の生活環境や公衆衛生、土地利用、さらには宗教的配慮といった複数の行政分野に深く関わる、いわゆる行政実務型・執行型の条例については、その性質上、町長および執行部との緊密かつ慎重な調整が不可欠であると考えております。
過去の実績を加味
実際のところ、本陳情を受ける以前から、私はこの課題について、「墓地、埋葬等に関する法律」や「厚生労働省の墓地経営・管理のガイドライン」、さらには現行の「日出町墓地、納骨堂、火葬場の経営に関する条例」等を精査し、所管の委員会、担当課長、法規係とも繰り返し協議を重ねてまいりました。加えて、他自治体における禁止区域の設定や、埋葬方法を焼骨に限定する規定の実例にも目を通し、「水道水源保護条例」や「環境保全条例」との連携も視野に入れた、より包括的な検討を行ってきたところです。
また、実際、日出町は当該墓地計画に対して既に「事前協議済書」を交付しており、また、トラピスト修道院では過去に町の許可を得て土葬を行ってきたという事実もあります。こうした背景を踏まえると、現時点で「埋葬は焼骨とする」との規定を新たに条例で明記することを、議会あるいは議員側から独自に提案するのは、極めて困難であると認識しております。
加えて、こうした困難さを反映するかのように、過去にも同様の趣旨の条例改正を検討した議員は存在したものの、実際に改正案が議会に提出された事例はなく、委員会としての発議にも至らなかったという経緯があります。これもまた、問題の根深さと慎重な対応の必要性を物語っていると理解しています。
町の基本的な方針は明確
しかしながら、ご承知の通り、昨年8月の町長選挙において、土葬墓地の建設に反対する立場を明確に掲げた安部町長が当選し、同年10月には、町有地の売却は行わないという方針を別府ムスリム協会に正式に伝達しています。さらに安部町長は、議員時代より、次のような基本的な法解釈と行政運営方針を一貫して示してきました。
・墓地経営の許可は、行政の広範な裁量に委ねられていること
・墓地は私的施設にとどまらず、公共の利益との調整が不可欠な施設であること
・周辺の生活環境との調和も、町長が許可を判断するうえでの重要な材料であること
このように、町としての基本方針も安部町長の立場に基づくものであることは明白であるため、今後は安部町長が、別府ムスリム協会との調整を通じて、法的、社会的、文化的、地理的な観点、さらには地域住民の声も踏まえた総合的な判断により、最終的な対応を決定していくことが期待されます。
陳情の趣旨に理解と共感
もっとも、その協議が円滑に進むとは限らず、むしろ難航することが予想される以上、現時点で議会が先行して条例による一律の規定を制定することは、行政の柔軟な対応をかえって妨げ、問題解決を複雑化させかねないという懸念も拭えません。本件に限らず、住民生活や公衆衛生、土地利用、宗教的配慮など、広範な影響を持つ行政執行型・実務型の条例改正においては、町長および執行部との十分な調整と合意形成が必要不可欠です。
以上を踏まえ、現時点において、本陳情を採択し、議会が単独で先行的に対応することは、制度上可能であっても、政策運営上は慎むべきであるという考えから、本陳情については、その趣旨には深く理解と共感を示すものの、議会としては「趣旨採択」とすることが最も妥当な対応であると考えます。